交通事故専門の弁護士

 

Q&A

皆様からお問い合わせの多い事柄をQ&Aにしました。こちらに掲載されていないことでご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお電話等でお尋ねください。

一般的事項編

賠償基準、賠償項目編

一般的事項編

賠償基準、賠償項目編


私は交通事故の被害者ですが,刑事事件の記録を入手する方法を教えて下さい。
加害者の刑事手続の進捗状況により異なります。
 ① 加害者の刑事裁判が終了し判決が確定している場合,所轄の検察庁にて刑事記録の閲覧謄写することができます。検察庁に問い合わせする前に加害者の氏名,罪名,検番等を確認しておかれるとよいでしょう。
 ② 刑事裁判係属中の場合,第1回公判期日後,当該被告事件の終結までの間,裁判が係属している裁判所に対し,当該被告事件の訴訟記録の閲覧・謄写の申請ができます(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条)。
 ③ 不起訴記録については原則として公開されませんが,実況見分調書等の客観的証拠と,供述調書については例外的に開示が認められることがあります。詳しくは,「法務省:不起訴事件記録の開示について」をご参照下さい。


交通事故による傷害の治療に健康保険は使えますか?
使えます。
特別な傷害でない限り,「第三者行為による傷病届」というものを提出して,健康保険を使用して治療が受けられます。
被害者に過失があり,過失相殺により賠償損害額が減額される可能性がある場合は,健康保険を使用するメリットがあります。
詳しくは,「損害賠償の基礎知識」>「交通事故における各種保険・制度」>「労災保険・健康保険の利用」>「健康保険の利用」をご覧ください


労災保険を利用するメリットはなんですか?
治療費が全額補償されます。
疾病が治癒するまで休業損害補償(休業の4日目から給付基礎日額の60%)と特別支給金(過失相殺・利益相殺の対象にならない)の給付があります。また,後遺障害の等級認定に関して,原則として書面審査で認定がなされる自賠責よりも被害者の方にとって有利な等級が認定されることがあります。


交通事故に遭い負傷しましたが,多大な治療費がかかります。示談等の手続の途中でも,治療費を支払ってもらえるような制度はありますか?
あります。
自賠責保険・共済には,仮渡金の制度があり,車両保有者の損害賠償責任の有無にかかわりなく,一定額の支払が仮渡金として支払われます。
任意保険では,内払制度があり,被害者が治療継続中のため総損害額が確定しないときでも,既に発生した損害額について支払いがなされる場合があります。ただし,内払制度については保険会社の裁量による部分が大きいため,必ずしもご希望の金額どおりの支払いがなされない場合がありますので,ご留意ください。


相手方の保険会社の提示している賠償額が適正なのかどうか,どうすればわかりますか?
相手方保険会社が提示する額は,保険会社が定めた基準で計算しているので,適正なのかどうかを一般の方が正確に見極めることは難しいものと思われます。
   相手方保険会社から提示された損害賠償額の計算書を当事務所にお見せいただければ,賠償額の適否,増額可能性の有無・程度等を詳しくご説明致しますので,お気軽にお問い合わせ下さい。


加害者に損害賠償請求するのに期限はありますか?
また,自動車事故に関する請求権全般の時効について教えてください。
 ―加害者への損害賠償請求権の時効
加害者に対する損害賠償請求権は,傷害部分については事故から3年,後遺障害部分については,症状固定から3年で時効により消滅します。
ひき逃げ等の場合,加害者が判明してから3年,加害者が判明しない場合は事故から20年で消滅します。
 ─保険金請求権の時効
 被害者らの自賠責保険金の支払請求権(直接請求権)は,3年で時効消滅します。自賠責保険のほかに,任意保険契約を締結した場合は,その任意保険契約を締結した任意保険会社所定の約款・その条項によります。
 なお,任意保険契約約款上の保険金請求権として被害者らの損保会社に対して損害賠償の支払い請求をすることもあります。
 ─被害者請求権の時効
 自賠法は,被害者が損保会社に直接,損害賠償額の請求ができる旨規定しています。この被害者請求権は損害を知ったときから3年間で時効にかかります。「損害を知ったとき」とは,原則として事故日ですが,後遺障害に関しては,後遺症が発現した日が起算点となります。また,民法上の時効と異なって,当事者が援用しなくとも,被害者請求権は当然に消滅するので注意が必要です。なお,期間内に仮渡金あるいは内払金が払われれば,その時点で時効が中断します。
 ─政府保障事業への請求権の時効
 保障請求権は3年で消滅時効にかかりますが,いったん裁判上で確定した保障金については10年間の消滅時効が適用になります。
 政府は,3年の起算点を事故発生時においています。


事故から3年を迎えるところなのですが,時効は大丈夫ですか?
交通事故の被害者の損害賠償請求権は,事故時に加害者が判明している場合,事故から3年で事故にかかります。ひき逃げのように加害者が判明しない場合は,加害者が判明したときから3年,事故から20年で賠償請求権が消滅します。
 もっとも,時効については,損害賠償債務の承認がなされたり,訴え提起のような強力な権利行使をすれば,時効が「中断」され,新たに所定の期間経過しなければ時効は完成しません。
 また,相手方からの示談交渉において,支払うべき賠償額の提示があったときは,提示のあったときに「債務の承認」が認められ,時効が中断されるものと解されます。もっとも,加害者が責任自体を争ったり,自賠責から支払われた保険金だけで賠償すべき損害がないと主張している場合は,損害賠償の「債務の承認」がなされたことにならないため,時効の中断は認められないので注意が必要です。
 時効完成が迫っている場合にあたるので,加害者から債務承認書をとったり,配達証明付き内容証明郵便で督促したうえ,6ヶ月以内に訴えを提起することによって時効を中断することができます。  時効につきご不安な場合,当事務所で必要な措置をお取りいたしますので,お気軽にご相談ください。


事故に遭った時,どの段階で弁護士に依頼すると,
賠償請求等の手続がスムーズに進みますか?
なるべく早い段階で相談することをお勧めします。
 事故時から時間が経ってしまいますと,事件の記憶が曖昧になってしまったり,証拠が散逸してしまい,過失や損害の立証が困難になってしまう場合もあり得ます。
 交通事故はある日突然起こり,被害者の方やご家族にとっては,どのように対処すればいいかわからず,ご不安を抱えておられることと思います。
そのようなご不安を抱えられている場合には,お気軽に当事務所にお問い合わせ下さい。


弁護士に依頼したほうがよいと想定されるのは,どのような場合でしょうか?
また,費用はどのくらいかかりますか?
 保険会社の対応に疑問を感じたり,交渉が難しいと感じた場合や,長期入院した場合,通院の場合でも後遺障害の等級認定をされる可能性が高い場合,また相手方に弁護士が付いた場合などが考えられます。
  弁護士費用につきましては,「ご相談・ご依頼費用」をご覧ください。


弁護士費用を加害者に請求することはできますか?
 原則として,弁護士費用は自己負担となります。
   例外的に損害賠償請求訴訟で勝訴した場合,請求認容額の1割程度が弁護士費用として認められます。
   なお,被害者の方の弁護士費用の負担を緩和する保険の特約として,弁護士費用特約があります。


弁護士費用特約とは何ですか?
 弁護士費用特約とは,損害賠償請求に関する弁護士費用や法律相談料を保険で賄うことができる特約です。
   保険会社により内容が異なりますので,被害者ご本人もしくはご家族が加入している任意保険,自動車の任意保険以外の損害保険や傷害保険などにこの特約がついている場合,適用されるかどうかご確認ください。
詳しくは「弁護士費用特約」をご覧ください。


慰謝料の額はどのように決められるのですか?
慰謝料の支払いについては,①自賠責保険・共済基準,②任意保険会社基準,③裁判基準の3つの支払基準があります。
   詳しくは「損害賠償の基礎知識」>「慰謝料」をご覧ください。



治療費にはどのようなものが含まれますか。
 治療費には,診察料,検査料,入院料,投薬料,手術料,処置料等が含まれますが,治療のために必要かつ相当であれば,原則として実費の全額を請求することができます。
   なお,入院中の特別室利用料,差額ベッド料は,医師の指示や特別の事情があれば認められます。特別の事情とは,傷害の部位・程度が重篤な場合,被害者の社会的地位・身分,普通室が満員等,諸般の事情からみて合理的と認められる場合をいいます。
   入院中の食事は,入院してもしなくても当然にかかる費用であるとして損害から控除するとの説がありますが,入院中の食事も治療行為の一環であるとして控除しないとするのが一般的であり,判例もこの立場をとっています。
   後遺症状固定後の治療費は,通常は否定されますが,症状の悪化を防ぐ必要があるなど後遺症状の固定を維持するために不可欠の場合や,治療により患部の苦痛が緩和される効果がある場合など治療費の支出が必要かつ相当なときには認められます。


入院雑費とは何ですか。
 入院雑費には,日常雑貨品費(洗面具,チリ紙,文房具,食器等購入費),栄養補給費(牛乳,卵,バター,茶,菓子等購入費),通信費(電話,電報,郵便代等)文化費(新聞,雑誌代,テレビ・ラジオ賃借料等),家族通院交通費に分類できます。
   これらは,個々の出費は比較的少額で,逐一主張・立証することは煩雑であり,かつ,実益にも乏しいことから,これらを入院雑費として定額化しています。
   だいたい,1日あたり1400円~1600円となっています。


マッサージ費は治療費として全額認められますか。
 柔道整復,鍼灸,あん摩,指圧,マッサージ等の東洋医学による施術費,治療器具購入費は,医師が治療上必要と認めて指示した場合や医師の指示がなくも施術の必要性,有効性が認められる場合には支払いが認められる傾向にあります。
   ただし,支払期間や支払金額につき,加害者側保険会社と争いになることがあるので,加害者が任意保険に入っている場合は,通院する前に保険会社の担当者に確認しておくとよいでしょう。
   なお,診断書は医師でなければ作成できないので,後遺症が残りそうな場合には,定期的に医師による診察・治療を受けておくことをお勧めします。


義手,義足等の費用は,損害として認められますか。
医師が身体機能の補完に必要と認めた場合には,義手・義足等の費用が損害として認められます。



通院にタクシ―を利用しましたが,タクシ―代の請求は可能ですか。
 公共交通機関の利用料は原則として認められますが,タクシー代は症状,被害者の年齢等によって必要かつ相当な範囲で認められます。具体的には,傷害の部位・程度・年齢等から歩行が困難であるとか,公共交通機関の便がないなどタクシー代を利用せざるをえない事情があるときは,タクシー代を請求することができます。
なお,自家用車を利用した場合は,ガソリン代が認められます。



交通事故により、1年間休学し卒業が予定より1年間遅れた場合、余分に払った授業料は請求できますか。
 被害者の被害の程度、内容、年齢、家庭や学習の状況等により、交通事故との因果関係が認められれば、相当な範囲で損害として認められます。
   交通事故により、休学や留年をせざるを得ない場合、交通事故との因果関係が明らかになれば、損害として認められます。もっとも、事故以前から学業不良である、出席日数が足りないなどの事情がある場合には、交通事故にあったことと留年したこととの相当因果関係が認められないことになります。
   また、事故による学習進度の遅れを取り戻すための補習費等や、被害者が親元を離れて一人暮らしをしていたような場合には、余分にかかった家賃なども必要かつ相当な額について認められることがあります。


事故にあって入院したため仕事ができずに収入が減った場合には、減収分について加害者に対して損害賠償を請求できますか
 交通事故で怪我をして治療のため入院し、その間仕事ができずに収入が減少した場合、事故に遭わずに働いていたならば得られたはずの収入との差額を、休業損害として加害者に請求することができます。通院中も、通院のため事故前と同じように働けなかったことを原因として収入が減少したといえるならば、その範囲で休業損害を請求うることができます。


会社員,自営業者が休業損害を立証するために必要な資料を教えて下さい。
 会社員などの給与所得者であれば、事故によって休業せざるを得なかった場合、勤務先から休業損害証明書を発行しえもらうことにより、比較的簡単に損害額を立証することができます。
   事業所得者は、事故前年の確定申告書の写しや市町村が発行する課税証明書を提出することによって自己前の収入額を立証し、休業が必要な期間(日数)については入通院等の治療の状況を診断書や健康保険の診療報酬明細書などにより立証することにより、休業損害を立証します。


会社役員が事故により仕事を休んだ場合、役員報酬の減少分の賠償を請求できますか。
 会社役員の報酬は、労働の対価だけでなく、利益配当部分も含まれていることがあり、一般に前者のみが損害算定の基礎と考えられています。
   だだ,労働対価部分と利益配当部分を区別することが難しい場合もあります。そのため,労働対価部分を判断するにあたっては,会社の規模、業績、事業内容、従業員数、役員就任の経緯、その役員の具体的活動等を総合に評価していく必要があります。


 私は会社役員ですが,事故により休業したことで,会社の売り上げが減少しました。
この減収分の賠償請求はできますか。
 会社役員が事故により休業したことで,会社の売上げが減少する等企業が間接的に影響を受けることがあります。このような場合,会社の受けた損害は原則として損害賠償の対象とはならないと考えられています。
しかしながら,例外的に、法人と個人とが実質的に同一といえるような場合には、会社の損害が実質上被害者個人の損害であるとみることができますので、会社の被った損害も損害賠償の対象となります。


主婦にも休業損害は認められますか。
 主婦等家事従事者の場合,収入はありませんが、家事労働も財産的評価が可能ですから、怪我のため家事に従事することができなかった期間について、休業損害を請求することができます。
   専業主婦の場合、基礎収入は、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢の平均賃金を基礎として算出されます。
   有職主婦の場合は、現実の収入額が賃金センサスの女子労働者平均賃金より低いときは平均賃金を、平均賃金より高いときは現実の収入額を基礎収入として算出されます。
   休業期間について、明確で客観的な基準があるわけではありません。そこで、家事労働にどの程度支障があったかについて本人の申告を聞き取ったうえで、傷害の部位・程度・入通院日数・被害者の受けたダメージの状況、家族構成等から総合的に判断します。


事故の1か月前に勤めていたコンビニを辞めてフリーターをしていました。無職ですが,休業損害は認められますか。
 休業中の無職者は,事故時に収入がないので,原則としては交通事故による休業損害は生じません。
もっとも,無職者といっても,治療期間が長くなると,その期間中に就労しなかったはずであるとまでは言い難く,労働の能力と意欲があり,就労の蓋然性があれば休業損害が認められることになります。具体的に,いつから,いくらかというのは立証の問題です。時期の問題は,求職活動をしていたか否か,客観的な雇用情勢,本人の能力,学歴,職歴,求めている職種,実際に再就職した場合の時期等が考慮されることになります。
   また,休業損害の単価については,本人の能力,学歴,職歴,それまで得ていた給与水準,実際に再就職した場合の給与水準等によって決められます。


事故にあって会社を休み、やむなく有給休暇を使いました。休業損害の請求はできますか。
 有給休暇には財産的価値があると考えられています。そのため,会社員が事故による怪我で欠勤し,やむなく有給休暇を利用したような場合,休業損害の賠償請求をすることが可能です。


慰謝料は何を基に決められるのでしょうか。また,慰謝料が増額される場合はありますか。
 交通事故における慰謝料の考慮要素としては,以下のようなものが挙げられます。
① 被害内容(傷害の部位・程度,入通院期間,後遺障害の部位・程度・継続期間,後遺障害出現の不安,後遺障害悪化の可能性)
② 被害者側の事情(男女の差,既婚・未婚の別,被扶養者の数,学校欠席・留年,
  年齢・職業・社会的地位,転職・退職の有無やそのおそれ,昇進・昇格の遅れ)
③ 加害者側の事情 (飲酒・無免許・ひき逃げ等の事故態様,加害者の年齢・社会的地位・身分,加害者の事故に対する態度)
④ その他の事情(被害者の事故により取得する利益,被害者・加害者間の人的関係,審理における態様)

増額事由としては,①事故態様の悪質性(加害者の故意若しくは重過失による無免許,ひき逃げ,酒酔い,著しいスピード違反,ことさらに赤信号無視等の運転)②著しく不誠実な態度がある場合,③被害者の被扶養者が多数の場合等が挙げられます。
なお,著しく不誠実な態度とは,単に謝罪や見舞いをしなかった,あるいは責任を否定しただけではなく,常識に反する対応をしたなど著しく不相当な場合をいいます。
 また,一家の支柱が死亡した際,慰謝料の扶養的機能の観点から,扶養者が多数存在する場合には,増額が認められる傾向にあります。


そろそろ症状固定と病院に言われたのですが,症状固定とは何のことですか。
 症状固定とは,治療を継続しても,それ以上の改善が見込まれなくなった時のことを言います。事故による傷害が治癒せず,症状が残った場合,医師に後遺障害診断書を作成してもらうこととなります。症状固定日を記載した後遺障害診断書を作成してもらうことにより,後遺障害認定手続きをとることが可能になります。
なお,症状固定日以降,原則として治療費の請求はできなくなりますし,後遺障害損害に関する請求権の時効が進行することとなりますので,症状固定の時期は賠償実務上重要な意味があります。


後遺障害診断書を医師に作成してもらう場合に,どのようなことに注意すべきですか。
 交通事故によって傷害を受けたときに,治癒すればその段階で治療が終了しますが,症状が残り,これ以上治療を続けても改善が期待できない状態になった場合,症状固定となります。
  症状固定になった場合は,後遺障害診断書を医師に作成してもらい,自賠責の後遺障害認定手続きをとることになります。後遺障害診断書が作成されると,その後の治療費が原則として請求できなくなるので,医師と相談して慎重に判断してください。
事故が起きた場合,保険会社の担当者に催促されて,まだ痛みが残っているのに,後遺障害診断書を作成させられてしまわぬよう,慎重にご対応ください。


後遺障害の等級認定の結果に納得できない場合,不服申立てをすることはできますか。
 あなたに対し認定された等級が,あなたの後遺障害の実際の状態から妥当でなかったということなので,異議の申立てをすることができます。
   任意保険会社を通して後遺障害認定手続きをした場合は,任意保険会社を経由して異議申立てができます。自賠責保険・共済に直接請求した場合は,自賠責保険会社・協同組合等宛に申立てをすることになります。
   異議が申し立てられると,損害保険料率算出機構の自賠責調査センター内に設置された,自賠責保険・共済審査会において審査が行われます。審査結果は保険会社を経由して本人に通知されます。
   仮に異議申立てが認められなかった場合や,後遺障害認定を争う他の選択肢としては,一般社団法人自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理申請する方法,裁判所に損害賠償請求訴訟を提起して,その中で認められるべき後遺障害等級を主張,立証する方法があります。
後遺障害の等級認定につきご疑問がございましたら,当事務所までご相談下さい。


後遺障害が発生しても減収がない場合,逸失利益は支払われますか。
 後遺障害による逸失利益の算定方法につき,受傷前の収入額と後遺障害残存後の収入額との差額を損害とする考え方に基づけば(差額説),原則として減収がない場合は逸失利益が認められません。
   もっとも,例外的に減収が発生していないことについて特段の事情があったり,将来の減収の可能性があったりすれば,逸失利益が認められる場合があります。
   逸失利益認定の際の考慮要素としては,①現在および将来の昇進・昇給等における不利益があるか,②後遺障害の部位・内容・程度と被害者の業務の具体的内容との対応関係からみて業務の支障があるか,③従前の業務に支障が生じたため配置転換を余儀なくされたなどの事情があるか,④勤務継続の不確実性に関する被害者側の事情として退職・転職の可能性があるか,⑤勤務先の事情として勤務先の規模,業績,雇用環境や勤務先を取り巻く状況はどうか,⑥被害の我慢・忍耐による勤務継続,⑦後遺障害による症状事態を軽減させる努力,⑧業務上のハンディキャップをカバーするための努力および職種を変更し,あるいは業務自体をレベルアップさせる努力をしているか,⑨勤務先の配慮や温情に支えられているか否か,⑩生活上の支障があるかなどが挙げられています。


交通事故により,家族が植物状態になってしまいました。この場合,どのような賠償請求が可能でしょうか。
 一般に,植物状態とは,「自力移動が不可能,自力摂食が不可能,糞・尿失禁がある,声を出しても意味のある発語が全く不可能である,簡単な命令には辛うじて応じることもできるがほとんど意思疎通は不可能である,眼球は動いていても認識することは出来ないという状態が治療にもかかわらず3ヶ月以上続いた場合」のことを言います。
   このような場合,症状固定時までは,治療費,入院雑費,入・通院付添費,交通費,入・通院慰謝料,休業損害等が,症状固定後は後遺障害逸失利益,後遺障害慰謝料,治療費,将来の介護費等が請求できます。
   <入・通院付添費,症状固定後の治療費,将来の介護費>
   入・通院付添費は職業付添人の場合は実費全額,近親者の場合は1日当たり5500円~7000円程度(裁判基準)が認められます。
   一般的には症状固定後の治療費の支払いは認められていませんが,植物状態になったため保存的治療を継続する必要性が認められる場合は,治療費の支出が認められます。
   症状固定後の将来の介護費用については,職業付添人による看護の場合は,原則として実費全額が,近親者による介護の場合は,常時介護を要する場合で1日当たり8000円~9000円程度(裁判基準)が認められます(ただし,常時介護を必要としない場合は,介護の必要性の程度,内容により減額されることがあります。)
   付添期間は,被害者の生存期間と一致することになりますが,保険会社の担当者からは,植物状態になった場合は平均余命は生きられないのだから,短くするべきだという主張がしばしばなされます。生存期間の予想は,個別具体的な事情を基に判断せざるを得ず,裁判においても判断が分かれています。平均余命より短い期間をとるべきだとする見解は,重度の後遺障害が残った者,植物状態になった者は通常人に比して生存可能期間が短いとする統計資料を根拠に主張されているようですが,このような統計資料自体は必ずしも十分なデータにもとづくものではないとして信用性に疑問が投げかけられており,賠償実務の大勢としては,無条件で平均余命までの生存期間を推定することが多いといわれています。
<逸失利益>
   植物状態の場合,常時寝たきり,食事は栄養剤等のみ,衣服は寝間着のみ,その他労働再生産のための費用の必要がない等の事情により生活費の支出が少ないと考えられることから,生活費控除をするべきではないかという問題が生じることになります。 
   もっとも,このような被害者は実際に生存しており現に生活費がかかっているのでこれを控除するべきではないでしょう。


高次脳機能障害になった場合,損害賠償を請求することはできますか。
 高次脳機能障害と診断されるためには,①頭部外傷があること,②事故後に意識障害が存在し,かつ,その程度が深刻であること,③脳萎縮が認められること,④認知障害・人格変化が顕著であることなどが要件としてあげられています。
   高次脳機能障害は後遺障害として問題となるので,まず自賠責保険・共済の後遺障害認定手続をとることから始めます。自賠責保険の後遺障害当級では,その程度に応じで1,2,3,5,7,9級の認定がされます。
   高次脳機能障害については,後遺障害認定問題のほかに,労働能力喪失率をいかに評価すべきか,介護費用をどの程度認めるべきか等非常に困難な問題があります。
   このように,高次脳機能障害になった場合には,様々な問題がございますので,早期に当事務所にご相談ください。


交通事故で顔に傷が残りました。どのような賠償請求ができますか。
 後遺障害として7級,9級,12級のいずれかに該当する可能性があります。
   後遺障害慰謝料の金額は,いわゆる裁判基準では,7級ですと900万から1100万円,9級で600万から700万円,12級で250万から300万円となります。裁判例においては,逸失利益を認めない場合は,慰謝料の上乗せを認めることが負いので,これらの金額よりも高額に認められる場合もあります。
   また,逸失利益については,被害者の性別,年齢,職業等を考慮したうえで,醜状障害の内容および程度に照らし,将来の就職,昇進,昇給,昇格および転職の可能性を含めた労働能力に対する影響の程度,生活上の不利益,さらには対人関係円滑化の観点などから個々の事案に応じた判断がされています。


PTSD(外傷後ストレス障害)による損害賠償請求は認められますか。
 PTSDと事故の因果関係の判断は,臨床医の判断のみではなく,客観的な事故態様,症状の明確性,事故との関連性,他の精神疾患の可能性等の諸要素を考慮し,慎重に検討することになります。
   PTSDとして認められる場合は,後遺障害が問題となります。フラッシュバック等PTSD特有の症状が長期間にわたり残存するということになれば,PTSDの後遺障害となります。
   しかしながら,後遺障害認定手続きのハードルは高い現状にあり,後遺障害認定手続きで非該当になる場合もあります。また,認定されても低い等級にとどまる場合もあります。さらに等級認定を受けても,労働能力喪失率や喪失期間の点で争いになることが多く,賠償交渉もきわめて困難なものになります。
   もしこのような事例が問題となる場合には,早期に当事務所にご相談下さい。


死亡事故の場合,どのような請求が可能ですか。
 事故後,亡くなるまでの治療費,葬儀費用,逸失利益(事故がなければ,本来得られたであろう利益),慰謝料を請求することができます。
   詳しくは「死亡事故」をご覧ください。


子どもが交通事故で死亡した場合,どのような請求が可能ですか。
 子供の死亡事故の場合も,成人と同様に,治療費,葬儀費用,逸失利益,慰謝料を請求することができます。
   ただし,未就労の子どもの逸失利益については,基礎年収,就労可能年数のとらえ方が成人の場合とは異なります。
基礎年収は,未就労であることから平均賃金を採用します。そして,年少者の場合は,未だ進学の具体的可能性が不確実であることから,賃金センサス第1巻第1表の産業計企業希望計,学歴計,男女別全年齢平均賃金を基礎にライプニッツ方式で中間利息を控除する方法で一般的に行われています。なお,算定の基礎収入について,大学生や,大学への進学が確実視される者の場合は,賃金センサスの大学の平均賃金を用いることがあります。
   就労可能年数は,18歳から67歳までの49年間とするのが通例ですが,大学在学中の場合は大学卒業時の22歳から67歳までとするのが通例です。


定年退職者(無職者)の死亡事故の場合,どのような請求が可能ですか。
逸失利益,慰謝料,葬儀費用,治療費を請求できます。
   無職者は,事故当時,現実の収入がないわけですが,判例は,無職者に労働能力と労働意欲がある場合(たとえば就業未経験者や失業者)は,死亡または後遺障害による逸失利益を認めています。
   通常の労働能力と労働意思がある場合は,後遺症による逸失利益については労働能力喪失継続期間の,死亡による逸失利益については死亡時から67歳までの賃金センサスによる男子または女子労働者の平均賃金を基礎に算定するものが多いです。なお,高齢者の労働能力喪失期間については,平均余命年数の2分の1で計算される傾向にあります。


交差点で青色信号を直進したところで,対向車線から右折してきた車と衝突事故に遭いました。保険会社に過失相殺の主張をされましたが,応じなければなりませんか。
 過失相殺とは,被害者にも過失がある場合に,これを考慮に入れて賠償責任あるいは賠償額を定める制度をいいます。過失相殺は,公平の観念から認められたもので,交通事故については,過去の事例の積み重ねなどによって,事故の態様,類型に応じた一応の目安があります。
   信号のある交差点で,青信号で進入した直進車と右折車の衝突事故の場合は,基本の過失割合が直進車20,右折車80とされており,直進車の過失について,修正要素として右折車の走行態様(徐行なし,直近右折,合図なし等)による減算,直進車の走行態様(スピード違反,著しい過失,重過失等)による加算が考慮されます。
   したがって,これら諸事情を考慮して過失が定められるわけですので直進車優先というだけでは,過失0というわけにははいきません。
   一般的に,車両同士の事故の場合,事故が起こるときは双方それなりの不注意が問題となる場合が多く,100対0の事故はそう多くありませんが,停車車両に対する追突や青信号対赤信号の場合などは,原則として100対0とされています。


友人の運転する車に同乗していて事故に遭いました。運転者に損害賠償を請求することはできますか。
 民法上の不法行為,自賠責法上の運行供用者責任が成立する場合,運転車は,好意で同乗させた者であっても,同乗者に対する賠償責任を負います。
   もっとも,被害者が事故発生の危険が増大するような状況を作り出したり(定員オーバーの乗車等),事故発生の危険が非常に高い事情があることを知りながら(無免許,飲酒運転等)同乗した場合には,一定限度で減額が認められる場合もあります。


交通事故で怪我をしたのですが,保険会社から持病を理由に賠償額の減額をすると言われています。応じなければならないでしょうか。
 体質的素因については,それが疾患である場合は考慮されますが,個体差の範囲に過ぎない身体的特徴は特段の事情がない限り減額の理由とできません。
   判例は,体質的素因が「被害者の罹患していた疾患」である場合には,素因として考慮するとしています。ここで「疾患」は,「加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか,疾患が難病であるかどうか,疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか,加害行為により被害者が被った衝撃の強弱,損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によって左右されるものではない」としています。
   このように,減額が行われるのは「当該疾患の態様,程度などに照らし,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するとき」であり,公平を失しない場合は減額がされないことに注意が必要です。
   仮に,疾患による減額が認められるとしても,どの範囲で減額が認められるかについては,疾患の軽重,被害者の性別,体質,事故の衝撃等の個別具体的事情によって決まりますので,保険会社の言い分が正しいとは限りません。
このような減額問題でお悩みの場合,一度,当事務所にご相談ください。


交通事故の被害を受けたが,心因的要因を理由に賠償額の減額をされました。応じなければならないでしょうか。
 心因的要因を減額の対象とできるかにつき,判例を分析しますと,被害者の性格やそれに基づく行動等が損害の発生,拡大に寄与しているか否かに着目しています。
  なお,むち打ち症の場合に,通院が長期化すると,保険会社の担当者から心因性を理由に治療の打ち切りを求めれたり,長期化を理由に減額を主張されることがあります。しかし,3~6ヶ月の通院で治癒するというのは,あくまで一般論であり,多少長期化したからといって安易に心因性を理由に減額されるべきではないでしょう。
  このような減額問題でお悩みの場合,一度,当事務所にご相談ください。

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